令和4年度の「第5回学びのフォーラム」は、8月に2回、12月に1回の合計3回の開催となりました(主催: 大学院教育実践研究科・地域教育文化学部、後援:山形県教育委員会)。
今回のフォーラムでは、これまでに引き続き、「学ぶとはどういうことか」を主題に、高校生・大学生・社会人 の合同でゼミナールを行いました。平成27年度から、高校生と大学生を対象とした合同ゼミナールを始めて、 今回で 8回目になります。今年度は、3回の開催で合計125名(高校生37人、大学生27人、社会人61人)の 方に参加していただきました。参加した高校は、次の 14 校でした。新庄北高校、北村山高校、東桜学館高校、 谷地高校、寒河江高校、山形北高校、山形西高校、山形南高校、長井高校、酒田東高校、酒田西高校、鶴岡南高 校、鶴岡北高校、鶴岡東高校。
今年度は、8月に初めて置賜地区(山形大学米沢キャンパス)、庄内地区(山形大学鶴岡キャンパス)において開催しました。「学びのフォーラム in 置賜」の当日8月 4日(木)は、豪雨とそれに伴う河川の増水等の影響により、公共交通機関の運休や主要道路の通行止めなど、実施の可否を直前まで検討せざるをえない状況でした。 そのため、当日朝にオンラインに限っての実施を決定しました。難しい状況にもかかわらず、4人の高校生、3人の大学生、3人の社会人の合計10人の参加がありました。参加した高校は、長井高校、酒田西高校の 2 校でした。
8月10日(水)の「学びのフォーラム in 庄内」は、7人の高校生、6人の大学生、11人の社会人の合計24人の参加がありました。参加した高校は、酒田東高校、酒田西高校、鶴岡南高校、鶴岡北高校、鶴岡東高校、新庄北高校の6校でした。数多くの高校から参加していただいたことに深く感謝いたします。
3回目(小白川キャンパス開催)の「第5回まなびのフォーラム in 小白川」は、12月18日(日)に開催しました。この日は、テキストの著者である佐伯胖氏(東京大名誉教授)をお呼びして、テキスト第3章「『遊ぶ』ということの意味」の節を読み、「学び」と「遊び」の関係について考えました。その中でも、特に、「ゲーム」の世界やスポーツにのめりこむことの意味をどのように考えればいいのか考えました。「ゲーム」や「スポーツ」は、見方によっては「賞金」や「商品」の獲得を目指した活動のようにも見えます。一方、見方によっては、「遊び」と「学び」とが混然一体となった活動にも見えます。高校生、大学生、社会人とがグループで考える中で生じた、この疑問に対する答えを考えることにしました。
佐伯氏からは、「スポーツ」にのめり込むことの意味を、「想定外」と対峙することのおもしろさとして考える重要性について話題提供がありました。サッカーワールドカップの試合や、大谷翔平選手に魅せられる点はどこにあるのでしょうか。佐伯氏によれば、それは、選手がいつも「想定外」と対峙しているからです。「想定外」と 向き合う、その緊張感にこそ、おもしろさがあります。授業に「想定外」との対峙は、どれほどあるでしょうか。「賞金」や「賞品」の獲得は、「想定外」の事態への向き合い方に対する評価です。それは、事前に基準があってなされている評価ではなく、「後付け評価」です。「想定外」と向き合い、その結果生まれた様々なものを「味わうappreciate」することが「評価」です。日常的な教育活動における評価は、こうした「後付け評価」となっているでしょうか。昨年度同様、J.デューイが、著書 How We Think の中で、遊び心 playful と真剣さseriousnessとは、同時に成立しうると述べていることも合わせて紹介されました。日常の教育活動に、その両立は実現されているか、参加者各自が改めて見つめ直す機会となりました。来年度も、参加者が直面している「学び」の場を再考する場として、本フォーラムを開催します。皆様のご参加をお待ちしています。
以下に、参加者の方からいただいた感想を一部紹介します。
【高校生】
・とても楽しい時間でした。学年、年齢が異なる方々とグループになって、違う目線で意見を交わし、確かに!って思ったり、知らなかった!と思ったり、いつもクラスの中で同じ学年の人と話してるのとはいい意味で全く違う感覚でとても新鮮でした。
・今まで"考える"を考えたことがありませんでしたが、学びのフォーラムのお陰で考える機会になりました。ありがとうございました!普段何気なく行なっていることだからこそ、日常を振り返り見直すことができました。学びのフォーラムの1番の魅力は、高校生、大学生、そして先生が一緒に意見交換をすることだと思います。違う日常で違うことを考えているので様々な角度から物事を捉えることが可能になり、より理解を深められました。
・今まで勉強するときに、コスパよくやろうとしたり、点数だけ取りに行こうとしたりして定着に至らないことが多々ありました。遊び心をプラスすることで、いつもつらい気持ちで取り組んでいた勉強が楽しみになる気 がしました。今日の話を忘れず学び続けていけたらいいなと思います。
・人と意見を交換し合うことはすごく楽しくて、現役の先生の意見も聞けたので参加してよかったと感じた。先生からの視点でどのように生徒を思っているかは普段聞けないので貴重な体験ができた。高校生は他人の評価を恐れていることが多く、遊び心がなくなってしまうことも多い。今日の話を聞いて、遊びがなければ学びもないことが分かり、これからの生活にも、人生でも、遊ぶことを意識するべきだと思った。自分は教職、山大を目指しているのでまた来たいです。
【大学生】
・初めて参加させていただきました。現役の先生方と高校生のみなさんとの交流を通して、時には高校時代を強く思い出し、時には自分の将来像をイメージするなど、普段の大学(講義)では得られない考え方や知識を身につけることができました。今の学校教育の中で「勉強」と「遊び」を結びつけることは難しいのではないかと感じていましたが、今回のフォーラムを通じて、少しヒントをもらえた気がしています。これからの大学生活、そして、自分が描く教師像に大きく生かしたいと思いました。ありがとうございました。
・大学のゼミでは、「いいこと思いついちゃった」、「ねぇ、きいて」と伝えて一緒に考えることで学びを実感できるのに、教育実習では、「進めよう」とか「評価」とか考えてしまうなぁと思いました。
【一般】
・初の庄内会場でのフォーラムに参加できたことを光栄に思います。年齢や職業など様々な属性の違いを越えて学び合うことの良さを実感しました。学校の教室の学び以上に、複雑なインタラクションとわかり合いが起きることに気付くことができて、大変有意義でした。
・様々なお立場、経験、年齢の方と同じテーマでお話しする時間は大変有意義だった。自分の見方が広がることで、新しい気づきや自分の考え方を練り直すきっかけになります。がっちり教え込まれて、前を向いてしっかり聞き、しっかり書く(黒板を写す)、今日は○○がわかりましたね!という方法で育ってきた自分にとっては、慣れるまで対話を続けていく学び方には違和感がありました。後からじわじわと効いてくる、そこで完結しないからこその学びは楽しいし、ワクワクしてきます。子どもの前に立つ教師として、こんな学ぶことの楽しさやワクワクを子どもたちに与えていきたいです。この 1 年半、眠っていた感覚が戻った時間で、本当にいい刺激になりました。楽しい時間でした。
・教員OBの立場として、「教育を語る」喜びは幾つになっても変わらないものである。しかし高校生とは 50 歳以上の年齢差があるが、彼女らの純粋な言動と感性から大きな励ましをもらった。切実なのは、若き優秀な者たちが教職を目指さないこと。このフォーラムにもう少し多くの高校生の参加を促して、教育の魅力と面白さと不可思議さを先輩が熱く語り継ぐ必要がある。それは地元に根差した地方大学の責務でもあるだろうし、私達教員OBの役割でもある。
・学部生のころに参加した「学びのフォーラム」と、教員になってからの「学びのフォーラム」は、文献の見方も、同じグループの方や佐伯先生の話の解釈も変わりました。4 月から担任として子どもたちと過ごす日々は とても楽しいですが、本当にいろいろなことが起こり、まじめな心だけではやっていけないこともたくさんあり ます。佐伯先生のお話にあった「想定外のことに体をひらくこと」「いいこと思いついた」は、明日からの子どもたちとの生活で大事にしていきたいと思いました。
・高校生のころから参加して、何度も「勉強」=「学び」―「遊び」だということについて考えてきたつもり だが、いざ教員として働いてみると「遊び」、できていないなと感じました。「それおもしろいね」と子供に巻き込まれてみるというのも大切だと思いました。
・「遊び」とは?「学び」とは?「能力」とは?という話題にはこれまで結構なってきたが、今回の「評価」が話題になったのは個人的にすごく楽しかった。働いているとますます「できる」とか「わかる」とか「学ぶ」と いうことが何だろうと考え始め、自分自身が「能力信仰」「勉強」に浸食されていることに気づく。ポジティブじゃないとやっていられない!!子どもの前に立っていられない!という日々の中でも、「いいこと思いついた!」 を即試せるのが教師の魅力だということに今日、気づかされた。
1月20日(金)に、山形大学地域教育文化学部・山形県教育委員会連絡協議会を開催しました。
本協議会は、山形県下の教育の発展と教育水準の向上を図るため平成17年に設置され毎年意見交換を行っております。
近年は、コロナ禍により開催が見送られておりましたが、当日は、県教育委員会からは髙橋教育長をはじめ12名の方から出席いただき、また、山形大学からは地域教育文化学部長、附属学校園の各校長・園長はじめ19名が出席し、数年振りに対面による協議会を開催いたしました。
今年度の協議会では、山形県の抱える教育現場の課題、大学の教員養成の取り組み、県教育委員会と山形大学が連携して行う研修のあり方、附属学校の新たな取り組み等を中心に種々意見交換と活発な議論が行われました。
県教育委員会からは、教員研修や新学習指導要領に対応する県の取り組みの紹介等の説明、地域教育文化学部からは、教員を目指す学部学生や教職大学院の院生の修学状況の説明、取り組み等の実例を交えての紹介もあり、1時間半に渡る会議は、お互いの理解を深めるとともに山形の地域課題を再認識した貴重な場となり、今後も継続的に議論していくことを確認し閉会しました。
(会議の様子)