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2024-01-26 14:37:00

 令和5年度「第6回学びのフォーラム」を12月3日、9日、17日に開催しました。(主催:大学院教育実践研究科・地域教育文化学部、後援:山形県教育委員会)。

 今回のフォーラムでは、これまでに引き続き、「学ぶとはどういうことか」を主題に、高校生・大学生・社会人 の合同でゼミナールを行いました。平成 27 年度から、高校生と大学生を対象とした合同ゼミナールを始めて、 今回9回目になります。今年度は合計115名(高校生44人、大学生24人、社会人47人)の方に参加していただきました。参加した高校は、次の11校でした。東桜学館高校、寒河江高校、山形東高校、山形西高校、山形北高校、長井高校、南陽高校、米沢中央高校、札幌日本大学高校、聖ヨゼフ高校、佐賀清和高校です。一般参加者の中にも、福島、宮城をはじめ、大阪府等、県外からも多くの方々に参加していただきました。
 3回目12月17日(日)には、テキストの著者である佐伯胖氏(東京大名誉教授)をお呼びして、テキスト第3章「『遊ぶ』ということの意味」の節を読み、「学び」と「遊び」の関係について考えました。
 今回話題になったことの一つに、遊びの自発性があります。遊びとは自発的なのか。それぞれのグループで、夢中になった遊びの経験を具体的にたどってみると、遊ぶという経験は自発的とは言い切れない過程があったことが見えてきました。佐伯氏からは、幼稚園の子どもが遊びの中で使う「いいこと思いついちゃった」という言葉のおもしろさを紹介していただきました。その活動に参加している中で、思いついてしまうことが遊びという活動を展開している。この展開を説明するには「中動態」の語り口が必要であることが提起されました。「中動態」は「能動態」でも「受動態」でもない、私たちが日常的に使っている語り口です。「見る」「見られる」ではなく、「見えてくる」。「する」「される」とは違う「してしまう」世界に注目する魅力があります。「勉強」は「する」「させる」世界ではなく、「勉強になる」もの。
 高校生からは、「遊び」の重要性は分かりつつも、普段の学校生活ではなかなか難しい、どうしたらいいか、という率直な悩みも投げかけられました。佐伯氏からは、J.デューイが、著書 How We Think の中で、遊び心 playful と真剣さ seriousness は同時に成立しうるだけでなく、それが最も理想的な状態であると述べていることも合わせて紹介されました。

 やりとりの中で、本フォーラムの中でつくられた方程式も共有されました。佐伯氏の著書には、「勉強=学び―遊び」という方程式が出てきます。この方程式は現代社会における学び、遊びに対する批判としては成立していても、高校生の学校生活にとっては何ができるか探るには難しいものがあります。その中で見つけ出したのが、移項するという考え方です。「学び=勉強+遊び」。私たち一人ひとりが、真面目心と遊び心を同時に追求することが、よりよく学ぶ一歩になる可能性がある。

 それぞれどのような工夫ができたのか。来年度またフォーラムでお会いしましょう。

以下、参加者の感想の一部を紹介します。

【高校生】
・遊び心とまじめ心が同時に併存するんだという新たな発見がありました。「勉強」、「学び」、「遊び」はそれぞれ、まったくの別物だと思っていましたが、その3つがあって、それぞれが成り立つのかなと思いました。今日気づけたことを将来に生かせるように、自分の希望する職業に就けるようこれからの勉強を頑張っていきたいです。とても充実した時間でした。
・教育について生徒の立場から考えることができて面白かったです。現職の先生が思っていることも伝えていただいて、普段ではありえない不思議な関係で、本音で話せて、これから生徒としてはどうしていこうかとも考えられて楽しかったです。ありがとうございました。
・「遊ぶ」ということを深く考えることはなかったし、それを様々な立場の人と意見を交わすことができていい経験になりました。どうしても教師になりたい!という背景には「教える」という概念がついてしまい、どうしたら人に伝わるかなどを実生活で考えてしまいますが、〇〇させるという使役動詞は使うべきではないのかなと感じました。また、学びの背景には遊びが、遊びの背景には学びがあるべきなのに、気づいたら高校では勉強することが中心になっていて、いつからそうなったんだろうとも考えさせられました。大学生の方や教師の方と話して、自分とあまり歳が変わらないのに、考え方や言葉がすごくて、自分も頑張りたいというモチベーションになりました。ありがとうございました。 

【大学生】
・現職の先生方とも、教師として子どもと接している中でのエピソードも交えながらお話を伺えたのが非常によかったです。「遊び」や「学び」については、私の中で答えを見つけられませんでした。遊びも、学びを進める上では大切で、遊び心とまじめ心を行ったり来たりすることで学びがどんどん深まっていくのかなというイメージが湧きました。授業においても子どもが遊び心を抱きながら夢中になって取り組んでいくことは理想的だと感じつつも、非常に難しいと思いました。「遊び」の観点からも、授業のあり方や教師のあり方について、もっと考えていきたいです。

【社会人】
・とてもエネルギーをもらった時間でした。教員1年目ということで毎日生きることに精いっぱいで大学院の時に学んだことを忘れていっている感覚がありました。こうやって佐伯先生の本を読んで語り合うことを通して、大切なことを思い出すことができました。今日いただいたパワーをつかって明日から仕事がんばります。
・教師の役割を考えさせられた時間でした。教えなくても子どもたちは自分たちで学び合っていく。そんな姿を求めて私自身も楽しみながら追究していきたいと思います。振り返ると、子どもたちが「今日の授業おもしろかった!深かった!もっと自分でやりたい!」と言い出すときは、互いの発言や姿から授業が進んでいる時だとやはり思います。高校生の話からも仲間とつながって学んでいる時が楽しいという話がありました。そんな生徒の姿を目指していきます。ありがとうございました。
・「教師」をおもしろがってやることを目指します。教員不足を解消するためには、働き方や給料を改善することが今まで一番大切だとおもっていましたが、「教師の魅力」をいろんな人に伝えていく、そして、私たち教師が魅力ある人物になっていくようにしたいと思います。

 

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2023-12-17 14:24:00

1217日(日曜)に、「令和5年度やまがた学校改革推進協議会」の第2回を対面とオンラインのハイフレックスで開催しました。この協議会は、文部科学省「教員研修の高度化に資するモデル開発事業」の一環として実施したものです。当日の参加者は、本事業に関わる山形県内の学校および山形県教育委員会、山形県教育センターの関係者など、39名(対面参加23名、オンライン参加16名)でした。

 

本事業は、これまで各個人の資質能力の育成に重点を置いていた教員研修を見直し、学校の教職員コミュニティの活性化を視野に入れた共同体ベイスの新たな教員研修システムを構築するものです。

 

当日は、出口毅副学長の挨拶のあと、中西正樹研究科長が座長をつとめ、次の報告がありました。

  1. やまがた学校改革推進協議会の申し合わせ案について
  2. 学校マネジメント講座」と「学校間ネットワーク」の進捗状況について
  3. 「学びカフェ」の運用について
  4. 「学びを広げる力」を評価する実践について

 

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出口副学長の挨拶 学びカフェの実践報告

 
「学校マネジメント講座」については、山形県教育センター副所長の樋渡美千代氏が、11月までの学校マネジメント講座の概要と受講生の充実度の推移を示し、講座の意義について次のように述べました。

11月になりようやく見えてきた小さな挑戦の糸口。世の中の多くの『研修』は、短時間で効率よく学べるパッケージになっている。一方で、この講座は、小さな挑戦から(受講生が勤務校で)まずやってみることから始まる。うまくいくこともあれば失敗することもあるため、短期間で何かを変えるというものではない。しかし、結果として学校が動き出す可能性を秘めている。」
「学校間ネットワーク」は、受講生の取り組む実践プランについて、大学教員がオンライン上で相談とコメントを行うものです。山形大学WebClassZoomを利用しました。実際に運用してみると、相談の機会を設けても、受講生からのアクセスとかみあわず、十分な活用にむけた課題が明らかとなりました。
 「学びカフェ」の運用については、河北町立谷地南部小学校教頭の荒木康子氏が実践報告を行いました。
運営の中心を20代の女性教員が担ったこと、開催は145分間で月に1回から2回実施したこと、テーマはその時々の悩みや1学期の計画、遠足おすすめコース等であったという報告でした。今年度初任の教員から次のような感想があることも紹介されました。「先生方の日頃の取組みや教育に対する考え方を知ることができ、とても勉強になった。まじめな時もあるが、基本雑談のようにゆる~いスタンスなので楽しい。」  
 ここまでの報告を受けて、参加者で意見交換をしました。

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意見交換をする参加者

意見交換をする参加者

 
参加者からは、「学びカフェの実践例を聞いたことで、イメージをもてた」などの声がありました。

 続いて、「学びを広げる力を評価する」について、森田智幸准教授より、次の点の報告がありました。学校内での研修の目的が学校のイノベーションであること、その際に、「デザイン思考」の考え方が大切であること、具体的には、「企てる」こと、「まずやってみる」こと、また、それを物語として語り、周囲を巻き込み、プロジェクトを少しずつ広げ、大きくすることの大切さが紹介されました。こうした視点から、学校マネジメント講座のなかで受講生が発揮している力を「学びを広げる力」と呼び、それを「見える化」して学校のイノベーションをマネジメントする資質・能力として明確にしていく構想が述べられました。

 以上の報告と意見交換のあと、外部評価をお願いしている松木健一福井大学理事・副学長と、佐伯胖東京大学名誉教授より、コメントをいただきました。

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コメントする松木健一氏 コメントする佐伯胖氏


松木氏は、「学びカフェ」から見えてきたこととして、「教師は一人では育たないこと、子どもの実践の語りと傾聴が重要だ」と指摘しました。その際、校内で気楽に話せるのは大切で即効的だけれども、「語りと傾聴における異質者」がいることで、「相手と共有できる根源」を探る「自己の持つ学習観・教育観・発達観の捉え直し」につながると述べました。具体的には、「学びカフェ」同士をつなぐ課題を提起しました。 

 佐伯氏は、協議会の議論を聞いた感想として、「『おもしろくなければつまらない』とはっきり言ってほしかった」と述べ、次の点を指摘しました。

 

・どうしても「研修」というと、「お勉強をする」「『教えてもらう』-『教えてあげる』」というモードになる。しかし、もっと「おもしろがる」ということをきちんと出し合う必要があるのではないか。

 

・この「おもしろがる」というポイントは、実践のなかでの「想定外に向き合うこと」であり、想定外をつぶすように「計画をたてる」のとは方向性が違う。

 

・「省察的実践」と安易に言うことに注意してほしい。「省察」とは、現場の中に(想像上であっても)身をおき、そのとき何が見えていたか見えていなかったか、自分が何を考えていたかを克明に語ることである。語りながら、「違うかな」とふっと湧き起ってくることに目を向けてほしい。

 

 参加者からは、「『まず、やってみる』というデザイン思考に共感した」「『学びカフェ』を通じて同僚性の構築に期待したい」といった感想がありました。

 

 

 最終の第3回のやまがた学校改革推進協議会は、215日木曜の午後に予定されています。関心をお持ちの皆さんの参加をお待ちしています。

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