2022(令和4)年12月18日(日)に山形大学小白川キャンパスを会場にして、第10回やまがた教員養成シンポジウムを開催しました。
このシンポジウムは、大学院教育実践研究科と地域教育文化学部、東北文教大学、公益財団法人やまがた教育振興財団が主催し、山形県教育委員会の後援をえて、開催したものです。
当日は、61名の参加(対面23名、オンライン38名)がありました。 本シンポジウムのテーマは、「世代交代がすすむ山形県、これからの教員の研修と養成をどうすすめるか」でした。
現在、山形県では、新規採用者については、教員志願倍率が低下する一方、大量採用されている20代後半から30代前半の教員層の力をどうつけるかが課題となっています。また、40代からの教員層がうすく、今後の学校経営を担う人材の養成についても大きな課題となっています。こうした問題状況は、山形県だけではなく、全国的に共通するものと考えられます。そこで、本シンポジウムでは、これからの教員の研修と養成の在り方について、大学、学校、行政、そのほかの皆さんと広く意見を交換したいと考えました。
最初にお二人の先生からご講演をいただきました。
はじめに、福井大学の理事・副学長の松木健一氏です。氏は、臨時委員として参加されている中央教育審議会での議論を紹介しながら、教員養成から教師教育へという展望とそれを担う大学教員のコミュニティについて話をされました(オンライン参加)。
次に、福井大学連合教職大学院の森田史生氏です。氏は、これまで、教員として、あるいは福井県教育総合研究所の研修課長として教職大学院に関わり、現在は、教職大学院の実務家教員としてお勤めです。福井県における学校と行政、大学の連携の実際とそこでの学校や教職員の変容について話をされました。 質疑応答と討論では、活発な質問と講演されたお二人の応答がありました。
・学校改善における校長のリーダーシップと同僚性の構築については、中央教育審議会で管理職の資質・能力が議論になっている点や福井県における校長のスクールプラン(学校経営方針)を教職員が協働で読み解く取り組みが紹介されました。
・学部段階から、教職大学院の「理論と実践の往還」を位置づける今後の体制整備については、学部4年間を、教員になるための準備教育ではなく、生涯にわたる教師としての職能成長の一部として位置づける点が示されました。(その意味で、「理論」は実践者の外側にあるのではなく、実践者の内側にあって素朴なものから精緻なものへ洗練されていくものだと強調されました)。
このほか、教員の世代間を越えたクロス・セッションや学校改善におけるカンファレンスの方法への質疑応答もありました。
シンポジウムの事後アンケートでは、次のような声がよせられています。
・行政の研修も校内研修もパッチワーク型というお話には、反省しつつ納得しました。校内研修を、1年間あるいは数年を見越してデザインしていくこと、教員個々と面談しながらいかにその個性が生かされるよう助言していくか、校長としての役割は重いですね。
・何より、現在の研修スタイルは何十年も経過している。校内授業研においても、さらに指導主事の指導も何十年も同じことをやっている。違う目線で教育事務所の学校や教員への指導を考えていきたいと考えているのだが。
・研修には研修を主体的に受けとめる教員の姿勢はもちろんですが、それを支える学校組織のあり方や、研修の普及をどのようにすすめていくかが大切だと考えます。大学院での学びをどのように職場に活かすのか、個人のもので終わらせないためにはどのようにすればよいのか、ヒントをいただけたように思います。
・場違いなところにきてしまったかと思いました。しかし、これからの教員研修は、大学、附属学校、県教委等が垣根を越えて連携していくことが大切になることを実感し、大変勉強になりました。時間も資源も人材も限られているので、各組織の強みを出すことができる連携を考えていきたいと思いました。
コメントには、参加者それぞれの立ち位置から、これからの教員の研修と成長について考えを巡らせている様子が述べられていました。本シンポジウムは、今後の山形県における教員の研修と養成を考えて行く第一歩になったと考えています。 (江間史明・宮舘新吾)